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八十八&一二三の文楽れんらくちょう

人形浄瑠璃文楽に関する情報を集めております。 情報お待ちいたしております。

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【MSN産経フォト】文楽に逢う

【MSN産経フォト】より。


文楽に逢う(2011.11.08 )


 灰色のぼうぼうと荒れ狂う髪を突き破る2本の角。顔色は不気味に薄青く、眉は逆立ち、口は大きく曲がり、平維茂(たいらのこれもち)をにらみつける眼は黒々と光る。

 いとも凄き山颪(やまおろし) 風にひらひら もみじ葉の 影にすっくと異形の姿…


「紅葉狩」 赤く染まる山を背景に優雅に舞う更科姫の美しい姿は、もはや何処にもない。頭から突き出た2本の角がぎらりと輝く。青白い顔は見醜く、恐ろしい。仲間を討った平維茂を殺すため、妖気に満ちた毒霧を吐く姿はまさに鬼気迫る。 だが、すさまじい形相の中に柔和を感じた。斬りつけてくる刀を受け流すのは一本の色鮮やかな紅葉の枝。立ち振る舞いには柔らかなしぐさの女性美を感じる。どことなく寂しげで悲壮感が漂う鬼女の姿に、哀れさを感じた。人形遣い、桐竹紋壽(錦秋公演、大阪・国立文楽劇場)


 大阪・国立文楽劇場で上演中の「紅葉狩」。美しい更科姫が、激しい山颪が吹いたとき、ついに本性をあらわす。その形相のすさまじさに鳥肌が立った。

 「紅葉狩」は、信州・戸隠山の鬼女伝説をもとに作られた同名歌舞伎から、文楽に移されたドラマチックな舞踊劇。


「摂州合邦辻」(合邦住家の段) 元武士で義を重んじる合邦は娘の玉手御前が犯した不義を許せず、思いあまって刀で刺してしまう。しかし、その後、娘の不義は偽りのものであり、義理を重んじればのことだと知るが、時すでに遅かった。娘の優しさを知り、後悔に暮れる父の涙。悲しく切ない親子の情愛に胸締めつけられた。人形遣い、合邦・吉田玉志、玉手御前・桐竹勘十郎(10月地方公演、群馬県・高崎市文化会館)


 前半、鬼女が化けていた更科姫の人形の首の名前は「娘」。若い女性に用いられる首である。後半、正体をあらわした鬼女に用いられる首は「鬼女」。人間を襲う鬼の姿を見事に表現した首である。



「ひらかな盛衰記」(松右衛門内より逆櫓の段) 「はっしっし、はっしっし」と船頭たちの勇ましい掛け声が響き渡る。船頭の松右衛門(樋口次郎兼光)の、きりりとした男の首の立ち回りは、えもいわれぬ格好良さがある。人形遣い、松右衛門・吉田玉女(9月公演・東京・国立小劇場)


 「自分の語る段が決まったら、その場に出てくる人形の首を見せてもらう。首の性根によって語り方が決まってくる」と、文楽太夫の最高峰、竹本住大夫さん。それほどに、物言わぬ首は、役の年齢や性格、性根など、すべてを物語る。



「寿式三番叟」神格化した翁が天下泰平、国土安穏を祈願して舞う。東日本大震災の復興や原発事故の沈静化を願う舞が厳かに披露された。人形は人間国宝の吉田簑助が遣った。(9月公演、東京・国立小劇場)


 いま、劇場には、およそ400という膨大な数の首が保管されているが、ひとつとして同じ顔の首はない。同じ種類でも微妙に彫り方や顔の描き方が異なる。

 大阪・日本橋の国立文楽劇場の3階に、首担当の、村尾愉さんの仕事部屋がある。やさしげな面差しの村尾さんはここで日々、首の化粧や手足のメンテナンス、新しい首の製作を行っている。


優雅に舞う更科姫。この後、醜い鬼女へと姿を変え、平維茂に襲いかかる


 長年の使用で色がはげたり、ひびが入った顔をていねいに塗り直す。首や眉、目を動かす仕掛けは大丈夫か。ときには首をまっぷたつに割って内部のバネや糸を新しく変える。

 舞台でどんなふうに見えるかにも注意を払う。「仕事場できれいな顔は舞台だとぼんやり見える。ちょっとどぎついぐらいの方がいいときもある」

 現代の文楽に合う首を求めて、求道者のように黙々と作業を続ける村尾さん。その首は、舞台で人形遣いによって命を吹き込まれ、華やかなドラマを繰り広げる。

  写真 頼光和弘

   文 亀岡典子


「紅葉狩」 鬼女の吐いた毒霧に包まれる平維茂。鬼女の恐ろしい姿にも臆することなく、勇敢に立ち向かう。人形遣い、吉田和生(錦秋公演、大阪・国立文楽劇場)


 【「通し」と「見取り」】

 文楽の上演形態には、「通し」と「見取り」があります。「通し」とは、ひとつの演目を最初から最後まで全段通して上演するやり方。今月の「鬼一法眼三略巻」は「半通し」で、全段ではなく、半分を通して上演することです。対して、「見取り」とは、いろんな演目の中からおもしろい段をピックアップして並べて上演する方法で、今月なら、「恋女房染分手綱」から「道中双六」と「重の井子別れ」、「伊賀越道中双六」から「沼津」を上演するという形式です。


勇ましい船頭の松右衛門は実は武士の樋口次郎兼光だった


頼光 和弘
 事件や事故に災害現場などの緊迫した現場取材が多い無骨者。最近、古典芸能「文楽」の魅力にとりつかれたが「似合わない」との周囲の声も…。チャームポイントはウエスト100センチのビール腹


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